中取り

(なかどり) 中汲み(なかぐみ)ともいう。酒を絞る時、酒袋にモロミを入れて最初に出てきたものが、荒ばしり、次に出てきたものが中取り、最後に圧力を掛けて出てきたものを責め(押しともいう)と呼ぶ。一見、最初が一番良いものが出て来そうに思えるが実は中取りが一番まろやかなバランスの取れたものになる。普通はこの部分を斗瓶に取って保存を行う。斗瓶取りと表示された場合は殆ど暗黙の了解で中取りとなっている、はず、である。

さてここまでは普通の話。どこまでが中取りかという基準についての話。実はそのようなものはないので、同じタンクから取って斗瓶20本取れる中取りもあるし、10本しかない中取りもある。蔵元さんのさじ加減一つで決まるのだが、要は出来上がった酒が中取りの名を冠するに相応しいかどうかが重要なのであって、消費者側は結局味でしか判断出来ない。ここでも、蔵元を信用するしかない。あの蔵元が、あの杜氏さんが出す大吟醸の中取りはさすがにすごい、という状態にあるべきである。

生ひね (なまひね)ムレ香ともいう。人によって色々表現が違うが、蒸れたような、やや焦げたような、香ばしいような、糠のような臭いである。主成分は、i-バレルアルデヒド、エチルバレレートなどの複合臭。これらの物質が発生する原因は、麹が出す糖化酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ)が活性を失わずにこれらのものを生成したため。したがって、生ひねの発生を押さえるためには、(1)火入れによって酵素の活性を失わせる(永久的)、(2)低温貯蔵して酵素の活性を失わせる(一時的)、(3)限外濾過により糖化酵素自体を清酒中から除去する、の3つのうちどれかが必要であることがわかっている。なお、いったん発生した生ひねは除去することが殆ど不可能であるため、酵素の反応が進まないうちに処理を施すことが必要である。

生ひね香はしばしばアーモンド臭、ナッツ臭という表現がされるとおり、やや香ばしく、これを好む人もいるが、これが発生するとほとんど皆同じ酒のようになってしまう(それだけ後に引きずる劣化臭)ため私はものすごく嫌いです。でも、本当に巷にはこれに気づかない人が多いです。蔵元さんでも気づいていない(気にしてない)人が多いです。いつも酒を飲んでいて、生ひねしている酒に出会うと、ああもったいない、生ひねする前はあんなに素晴らしい酒だったのに、早く火入れしてくれていたらなあ、と思うことが良くあるのです。

日本酒度 (にほんしゅど)水を0としたときの相対比重の指標値。マイナスである程重く、プラスである程軽い。清酒の比重が変わる要因は一番分子量の大きな糖分が支配的であるため、ごく大雑把に言えば、世の中に言われているように甘さの指標にはなり得るのである。

しかし、この値ほど一人歩き、誤解の嵐となっているものはない。少し清酒を研究(この言い方自体も変だが)している人がまず最初に口にするのが”辛口が好き”であり、もう少し齧ると”日本酒度が+7以上の酒じゃないと私は飲みません”などと仰います。そんなに比重の軽い酒が飲みたいのなら、純粋アルコールを水で薄めて飲んでいれば良いと思うのだが。清酒は元々甘いのが当たり前であり、それと調和する旨み、酸、香り、アルコールの辛さなどの総合芸術であり、決して日本酒度だけで語れるものではない。+1の酒でも十分切れが良く辛く感じる酒もあるし、+7でも甘く感じる酒はいくらでもある。


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